商品の環境価値を高めるカーボンオフセット

 1997年にイギリスで始まったカーボンオフセットが日本で盛り上がりを見せたのは、2008年でした。郵便事業株式会社は京都議定書第一約束期間に合わせて2008年から2012年までの5年間にカーボンオフセット付き年賀はがきを発売し、国内のカーボンオフセットの普及啓蒙に貢献しました。カーボンオフセットとは、自分自身では削減しきれない温室効果ガス排出量を他の場所で実現した排出削減・吸収量等をクレジットという形で購入することで、その排出量の全部あるいは一部を埋め合わせることです。カーボンオフセット付き年賀はがきは、1枚55円で販売され、消費者が支払った5円に郵便事業株式会社が5円を加えて10円分が海外での自然エネルギー発電による削減プロジェクトや国内の森林保全による吸収プロジェクトなどから生まれたクレジットの購入に当てられました。2009年から4年間でカーボンオフセット付き年賀はがきの助成金総額5億7,284万円で159,332トンのCO2削減量を購入したそうです。

 こうしたカーボンオフセット付き商品は、食料品、日用品、旅行、イベント、オフィス用品、自動車、プリンターなど様々な分野に広がりました。偽装を防ぐための認証制度も構築されました。報道発表された取組事例は2013年6月時点で1000件を超えていますが、まだまだ街中でカーボンオフセット商品を見かけるのは希です。これは、事業者の認知度が低いだけでなく、消費者の認知度・理解度が低いことが原因と思われます。

 2013年は、世界各地で干ばつ、大洪水、巨大台風、寒波など異常気象に見舞われました。日本でも猛暑、集中豪雨、竜巻、台風による被害は記憶に新しいと思います。世界の異常気象は連動して起こっています。地球温暖化が原因となって地球のエネルギーバランスが崩れ始めていると科学者たちは警鐘を鳴らしています。人類は今一度地球温暖化に対する危機感を醸成しなければなりません。

 カーボンオフセットは、消費者が身近に取り組める温暖化対策の一つです。事業者はその機会をもっと消費者に提供すべきではないでしょうか。カーボンオフセットは商品に大きな付加価値を付けることにほかなりません。消費者に受け入れられる、すなわち売れる商品にするためには地域性とストーリー性が重要です。地域性とは、オフセットに関わりのある地域から創出されたクレジットを選ぶことです。たとえば地元で生まれたクレジットや被災地で生まれたクレジット、原料調達先で生まれたクレジットなどを選ぶことです。ストーリー性とは、カーボンオフセットをすることで森林保全につながるとか、原料調達先の雇用促進や生活向上につながるなど、取り組みのストーリーを構築できるクレジットを選ぶことです。カーボンオフセット付き商品は地球温暖化対策や様々な社会貢献につながるだけでなく、商品の付加価値を高め、消費者に選ばれる商品になり得るのです。ぜひ多くの事業者に取り組んでいただきたいものです。

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